結婚できた男・阿部寛と結婚しない女・沢口靖子の熱愛トラウマ
『まだ結婚できない男』の阿部寛の恋愛を振り返る
ただ、このおかげで阿部は役者としての実力不足も痛感することに。つかこうへいの舞台に出るなどして演技力を磨き「いい男」なだけの俳優というイメージを脱却していった。また、私生活ではデビューまもなくして経験した恋愛スキャンダルがこたえたのか、浮いた噂は沢口だけで、43歳まで独身を続ける。ゲイ疑惑を囁かれたこともあったが、06年にはドラマ「結婚できない男」に主演。イメージと演技力とが結実し、代表作のひとつとなった。
その翌々年、一般人と結婚して、2女をもうけたものの、妻子あるイメージは希薄だ。そのため、前出ドラマの続編となる「まだ結婚できない男」が現在放送中だったりする。長い目で見れば、かつてのスキャンダルを肥やしにできているわけだ。
一方、沢口はどうかといえば、こちらはさしずめ「まだ結婚しない女」だ。阿部のあと、松岡修造との熱愛も噂されたが、そこでも生々しい話は出てこなかった。54歳の今も「大物独身女優」のままである。第1回東宝シンデレラとして世に出た人だが、そのポジションは前出の「かぐや姫」に近いだろう。
その選択に、31年前の一件がどれくらい影響しているかは想像するしかない。交際発覚直後、彼女は「週刊明星」のロングインタビューに2号続けて登場し、トータル9頁にわたって語った。そのなかには、
「ちょっとでも噂になると、この世界こわいですから。レポーターの人がワーッときたら、私きっと泣いちゃう」「結婚してる役って、うまくやれるかな。(略)もう本当の結婚なんて、いつになるかわかりません」
という発言が。また、仕事への欲がどんどん増してきたことも口にしている。恋愛や結婚への欲がそれを上回ることは、これまでなかったのだろう。それゆえ、代表作にしてライフワークというべき「科捜研の女」を20年にわたって続けることもできている。最新シリーズにいたっては、他にはもうNHKの大河ドラマくらいでしかお目にかかれない、ゴールデンタイムでの1年間放送だ。
その主人公・榊マリコはいわゆる仕事人間で、バツイチ子供なしという設定。ただ、この設定が活用されたのは初期に限られ、渡辺いっけい扮する元夫は第3シリーズを最後に出演していない。年齢もスタート時の30歳から44歳(14年の年末スペシャル時点)までは劇中で何度か「更新」されてきたが、もはや年齢など超越した存在に見える。人気が落ちたり、あるいはドラマ自体がいよいよ終わる、というタイミングで、再婚エピソードが描かれるようなことも、なんとなくなさそうである。
なお、阿部の「まだ結婚できない男」のような作品を、沢口がやるようなことも考えにくい。独身男性を「結婚できない」とは言えても、独身女性を「結婚できない」とはなかなか言えず、こちらはあくまで「結婚しない」という表現が望ましい、という近年のジェンダー的忖度である。若き日に花火デートを楽しみ、今はそれぞれ連ドラの主役を務めるふたりは、そんな時代状況も象徴しているのだ。
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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫 (著)
女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?
人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦
瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。
摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。
瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)